2010年08月04日

沖田修一

ゴッドタンのマジ歌選手権で、東京03の角田と一緒に演奏する大竹マネージャーは、大竹まことの息子らしい。
多才な息子さんを持ったもんだ。

さて、俺が昨年後半から愛してやまない、一人の映画監督がいる。
その男の名は、沖田修一。
今回は、前述の大竹まこと氏が在籍する、シティボーシズのFilm noirを鑑賞しに、新宿テアトルへ行った際の話。
沖田監督は4作品中のひとつ、「俺の切腹」で脚本・監督をしているのだ。

実は前週に、録音技師である山本タカアキ氏を取り上げた録音映画祭で、3日目は沖田監督作を取り上げるってことで池袋シネマロサへ行き、沖田監督と握手までして貰った際につい口をついた、「来週のテアトルも、観に伺います。」という、一度出した言葉を曲げる訳にもいかんので、テアトルまで行ったというのは、ごく内密な話だ。
まぁ、監督は覚えてなど無いだろうが、俺も男だ。
一度出した言葉を覆す訳にはいかない。
週間日誌が、いともあっさりと陥落した男の言葉とは、まったくもって思えまい。
何度でも言おう。
俺は、飽き性なのだ。

話を進める。
正直、今の俺に新宿は、かなり遠い。
物理的な距離の話ではない。
俺の心と新宿が、やたらめったら遠いのだ。
何度も、「やっぱ、やめよかな。」とよぎったことか。
しかし、俺も男だ。
意を決してテアトルに足を運んだ。
そこに至まで、いったい何があったかは、あえて伏せようと思う。
会場前で少し時間を潰していると、目の前を挙動不審な男性が右往左往している。
なんだろうこの人、と思い顔を覗くと、それこそまさに沖田監督。
笑いを堪えるのに苦慮した。
しかしこの時点で、新宿まで来た甲斐があったと思えた。
出足は好調だ。

劇場の受付で座席を決める。
ど真ん中。
左右は誰もいない。
周りにはシティボーイズのファン、この日のトークショーを沖田監督と担当する夙川アトムさんのファンがメインだったと思う。
沖田監督のご友人達もいたようだ。

さて、そんな特等席に一人で腰掛け、俺は映画を鑑賞する。
先にも述べたが、映画のタイトルは、「俺の切腹」。
既にしてタイトルでひと月はニヤつける。
流石だ。
そして、内容は沖田風・時代劇。
切腹を命じられ、辞世の句に苦脳する、そんな侍の話だ。
苦悩、といっても、そこは沖田監督。
すっげぇくだらねぇ。
冒頭から、藤沢周平を匂わせるが、原作クレジットの藤堂兵衛は、魁!男塾の登場人物だ。
つまり、そんな原作は、ない。
やってくれる。
免疫のない人は確実にスルーだろう。

話の内容も素晴らしい。

主人公は攘夷活動、要人暗殺を命じた活動家。
しかし計画が失敗し、お上に切腹を命じられる。
だが主人公は、命を絶つ事への苦悩ではなく、辞世の句をどうするかで思い悩む。
決めにいった句を嫁にダメ出され、更に苦悩。
しかし嫁の助言もあり、揚がり屋(牢屋)に入る前には、ある程度の句は決していたはずだった。
が、切腹のその日までは、いくらか日数がある。
主人公は苦悩する。
果てして、この句でいいのか・・・。
思い詰めた結果、揚がり屋の番に相談を持ち掛ける。
番人も最初は相談に乗るが、結局は自分で決めるべきだと正論で返す。
しかし、主人公は既にキャパオーバーを引き起こしており、いったい何が良いのか、最早さっぱり分からなくなっていた。
すると、隣の牢から声がする。
豪快で、そして機微を備えた、まさに男の中の男の句を聞かされる。
主人公はいたく感銘を受けた。
しかし、一回聴いただけで、覚えられるはずもない。
隣の牢の主に、再度句を詠んで欲しいと懇願するも、牢の主の返事はそっけない。
押し問答のあと、最終的にこう言われる。
自分で考えろ、それが、クリエイティブってもんだ、と。
主人公は悩む。
クリエイティブって、何だ、と。
そうこうしているうちに、切腹の日は訪れる。
揚がり屋の外で、主人公の弟子達が待ち受ける。
この辺りは恐らく、吉田松陰がモデルだろうか。
先生を返せと、介錯人に詰め寄る弟子達。
介錯人は主人公の最期を語ろうとする。
それを聞いてか聞かずか、介錯人に詰め寄る弟子達。
その中に、一点だけ、これまた壮絶にくだらねぇ仕込みがされているのは、さすが沖田修一といったところだ。
俺は今まで色んな時代劇で坂本竜馬を観てきたが、これほどまでに雑な扱いを受ける坂本竜馬は観た事がない。
これだけでも一見の価値がある。
さておき、そんな弟子達に、いよいよ介錯人から、主人公の辞世の句が伝えられる・・・

その句については、是非とも映画でご覧いただきたい。
ほんっとうに、くだらねぇ。
だからこそ、沖田修一であり、俺はこの監督が、大好きなのだ。
観に行って良かった。
なんかよく分からんけど、がんばろうかな、と思えた。
ありがとう、沖田監督。
俺、がんばる。

上映後のトークショーも終わり、ロビーに出る。
そこでまた、沖田監督とすれ違う。
毎度思うが、監督は恐ろしくオーラが無い。
しかし、監督は人気者だ。
今回、俺はどうしても監督から一筆いただきたくて、隙を伺っていた。
しかし、無常にも閉館の時間が来た。
俺は打ちのめされ、会場を後にした。
が、今までの俺なら、そのままオメオメと帰路についていたことだろう。
しかし、今回は待った。
俺の人生で、二度目の出待ちだ。
一回目は、元・ミッシェルのクハラさんだ。
あの時は心臓が口から飛び出すくらいの緊張だった。
しかし、あれから俺も成長した。
いくらかの余裕を持って、監督を出待っていた。
なぜなら今回は、確実に監督の口元に、いくらかの笑いを帯びさせる事が出来ると、確信していたからだ。

監督が出てきた。
俺は意を決してサインをねだった。
そして、こう言った。

「楽しむ、って、書いていただけませんか。」

それを聞いた監督の口元が、確かに緩んだ。
してやったりだ。
「楽しむ。」とは一体何か。
それは、2008年、監督が路上で鉢合わせた、かの三國連太郎にサインをねだろうとするも、決心がつかず、仕方なく自分で自分の手帳に、「楽しむ! 三國連太郎」と書いた、まさにそのフレーズだ。
ただサインを貰うだけじゃない。
少なからず、監督にも小さな笑いを提供出来た、それが本当に嬉しかった。
そんな念願のサインを、そして監督の笑顔を貰い、意気揚々と帰路に着いた。
俺はほんとに嬉しくて、駅に向かう途中で何度も見返した。

しかし埼京線で池袋を通過した頃、「何やってんだ、俺は?」と、一瞬思春期みたいな気持ちになった事は、まだ誰にも言っていないし、これから先も、誰にも打ち明けるつもりは無い。

それから、ことあるごとに、俺は、その手帳を開き、沖田監督の言葉を励みにしている。


★興味のある方は、是非とも新宿テアトルへ。
8月6日まで、21:00〜上映中です。
詳しくは、コチラを。

http://www.cinemabox.com/schedule/shinjuku/index.shtml
posted by マスダ at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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